本当においしい日本酒。
本当においしいお酒と出逢うことは、人生の中で実はあんまりない。
以前「ロ万」という日本酒に感動した。
おいしいお酒を飲むためには、もちろんお酒の質は重要なのだけど、私の場合は家でひとりで飲むより店で飲んだ方がおいしい。
特にビールなんかは、達成感のあるイベントの後に飲むと格別だと思う。日本酒やワインは、ペアリングが重要で、食べ物の相性に応じて味わいが変わる。
だから、ロ万を飲んだ時は、その店の雰囲気、人、料理のすべてがマッチングしていたのだと思う。
だけど、今となっては、感動した事実を思い出すことはできても、何を食べて誰と飲んでいたか、ということは覚えていない。
それでも今やロ万は、私にとって、級友のような存在であるし、時々店に置いていると、とてもあたたかな気持ちを思い出させてくれる。
おいしい日本酒を飲んでいても、そこに一体感がなければそのお酒は無二の存在とはならない。
級友というイメージだから、一緒にいた人は古い友人だったかもしれない。男だったのか、女だったのか。それは分からないけど、とにかくロ万を飲んだ時はすべてが完璧だった。
本もアルコールも、自分にとって特別な存在になるためには、そのものの味よりも、味わえるかどうかだったり、その瞬間、完璧だと感じる体験をしたかどうかが大事なんだと思う。
もしかしたら、人もそうかもしれない。